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2011年5月15日日曜日

Rational Choice

今回ご紹介するのはRational Choice。Itzhak Gilboa教授による決定理論(Decision Theory)の入門書です。

150頁弱のコンパクトな本ですが、寓話や対話を交えながら、分かり易く、かつ、深い議論が展開されます。冒頭はイソップ物語の「酸っぱい葡萄」の話。高い枝にぶら下がっている葡萄を取ろうとして何度かTryするものの、葡萄を取れなかったキツネは、「あの葡萄は酸っぱいに違いない」と言ってその場を去ります。これは、feasibility(≒can)とdesirability(≒want)を混同している典型例として紹介されます。そして、Rationalityとはこの2つを区別して扱うことであると指摘します。もっとも、不確実性のある状況下では、この2つの区別だけでは不十分なこと、また、現実的には両者の区別はかなり曖昧であるということも指摘されます。

本書では、Rational Choiceに関するいくつかのモデルに対する洞察がなされます。Gilboa教授は、モデルの有用性だけでなく限界にも言及します。そして、こうしたモデルを理論として考えるのではなく、paradigm(a system of thought)として捉えるべきであると主張します。paradigmは我々に、世の中の様々な事象を考察する思考方法を提供してくれます。

序文には、「高校卒業程度の学力があれば十分読める」と書かれており、数学はほとんど使っていません。しかし、理論的にはかなり高水準です。特にⅢ章(Group Choices)などは、(重要な指摘事項がさらっと書いてあったりしますので)きっちり理解するためにはある程度の前提知識が必要になると思われます。

なお、数学の補足説明や演習問題(及び解答)がWeb上のAppendixesという形で用意されているのも有難いです。今はこれを少しづつ読み進めています。

(目次)
I Optimization
 1 Feasibility and Desirability
 2 Utility Maximization
 3 Constrained Optimization
 
II Risk and Uncertainty
 4 Expected Utility
 5 Probability and Statistics
 
III Group Choices
 6 Aggregation of Preferences
 7 Games and Equilibria
 8 Free Markets
 
IV Rationality and Emotions
 9 Evolutionary View of Emotions
10 Utility and Well-Being
 
Online Appendixes
A Mathematical Preliminaries
B Formal Models
C Exercises
D Solutions


2011年5月14日土曜日

The Black Swan

今さらながら、THE BLACK SWAN(Nassim Nicholas Taleb)を読んでいます。同著者のFooled by Randomnessは以前読んでいたのですが、BLACK SWANの方は読んでいませんでした。

BLACK SWANを読もうと思ったのは、映画のBlack Swan(ブラック・スワン)で思い出したからです。(ちなみに、映画は見ていませんし、映画と本は内容的に全く関係ありません。)

内容的には、Fooled by RandomnessThe Mith of the Ratinal Marketなどとも被る部分も多く、また、最近では類書もいくつか出ていますので、新鮮味はあまり感じませんでした。もう少し早く読んでいたら、違った印象だったと思います。

なお、本書は英語的には結構難しく、西洋文化や歴史的な背景知識を前提に書かれている部分もあるので、東洋人である日本人には案外読みにくいのではないかと感じました。


2011年4月24日日曜日

Managing(H. Mintzberg)

今回は、Henly MintzbergのManagingです。昨年の初めに買って途中まで読んで積読になっていた本書ですが、(先頃翻訳版も出たこともあり)気分を一新して通読してみました。

一言で言えば、MintzbergのSeminalな著書The Nature of Managerial Work(1973)の現代版です。この本は今ではなかなか手に入り難いようなので、エッセンスを知るにはこちらの論文を読んでも良いと思います。

H. Mintzberg, The Manager's Job: Folklore and Fact, Harvard Business Review, July-August 1975(1990 Reprint)

Mintzberg教授の視点と洞察力の秀逸さは今さら申し上げるまでもありませんが、それと同時にすごいと思うのは、同じテーマを40年間研究できる情熱と粘り強さです。何事にも飽きっぽい私にとっては驚異的なことです。

まずは、今回ご紹介するManagingの紹介動画がありますのでご覧ください。



本書は6章から構成されています。第1章は序章で、1973年の著書をベースに、Managerの仕事は今も昔もあまり変わっていないと主張します。そして、Managingの3つの側面として、有名なTriangle(Art, Science, Craft)が紹介されます。
Thus, ・・・ managing can be seen to take place within a triangle when art, craft, and the use of science meet(p.10).
本書では、Managerial Workを2つの側面から考察します。2つの側面とは、①仕事の特性(Characteristics)と②仕事の内容(Content)です。第2章では仕事の特性が、第3章では仕事の内容が扱われます。


第2章ではManagerの仕事の特性として、unrelenting pace, brevity & variety, fragmentation, orientation to action, informal & oral communication, covert control といった概念が説明されます。また、昨今のInternet(e-mail)の発展がManagerの仕事に与える影響にも言及します。


第3章は、Managerの仕事の内容を扱います。本書の理論的中核を成す部分で、Managerの仕事の内容に関する包括的なモデルが提唱されます。一般的に、Managerとは他人を通じて物事を行う人(get things done through other people)ですが、この考えをさらに進めて(人との距離感という観点から)、① Managing through Information ②Managing with People ③ Managing Action Directoryという3つのPlanesが提示されます。 ①が最も間接的、③が最も直接的なManagement Styleと言えるでしょうか。さらに、Managerは組織の内(Inside)と外(Outside)との接点を持っています。これらを組み合わせて(Managerの機能を整理して)、統合的なモデルが提示されます。


第4章は29人のManagerの仕事を実際に観察した中で、Managerの仕事を5つのContextsで整理していきます。5つのContextは、①Exrternal, ②Organization, ③Job, ④Temporal, ⑤Personです。ややDescriptiveな記述のため読み進めるのがやや大変ですが、最後に有名なTriangle(Art, Science, Craft)に関連付けられるので、すっきりと整理することが出来ます。


第5章の題名はThe Inescapable Conundrums of Managingです。Conundrumsというのは難問or謎といった意味でしょうか。再びマネージャーの仕事や役割の複雑性にスポットライトが当てられます。①Thinking Conundrums、②The Information Conundrums ③People Conundrums、④The Action Conundrums、⑤Overall Conundrumsという視点から考察が加えられます。

H. MintzbergとM. Porterは言わずと知れた経営戦略論のGuruでもありますが、二人の戦略の考え方にはかなりの違いが見られます。Porterは、経済学的な視点から戦略を科学的に捉える代表的な学者ですが、Mintzbergは、戦略を主観的・相対的・全方位的に捉えます。本書でも、Mintzbergは次のようにPorterを痛烈に批判しています。

When Michael Porter wrote in The Ecconomist that " I favor a set of analytic techniques to develop strategy"(1987), he was dead wrong: nobody ever developed a strategy through a technique( p.162). 

結局、Managerの抱える難問(上記の6つ)については、これらを完全に排除したり完全に解消したりすることはできず、うまく折り合いをつけたり、部分的に解決していくということになります。
These paradoxes and predicaments, labyrinths and riddles, are built into managerial work — they are managing — and there they shall remain. They can be alleviated but never eliminated, reconciled but never resolved(p. 192).

6章のタイトルはManaging Effectivelyです。といっても、効果的なManagementを行う具体的な方法が示されるわけではありません。むしろその対極で、効果的なManagementのPanaceaなどは存在しないことが示されます。まず、(成功しているManagerを含め)Managerには皆欠点があり、ただ、その欠点が致命的になってないだけだと指摘します。そして、Managementの有効性を考えるための7つの概念(Energetic, Reflective, Collaborative, Analytic, Worldly, Proactive, Integtative)を用いたFrameworkが提示されます。次に、効果的なManagerの選定、評価、育成法が展開されます。特に育成については、(従来のBusiness Schoolの)教室ではManagerを育成できないという考えから、Manager育成のためのProgrammeであるInternational Master’s in Practicing Management の内容の紹介が中心となります。

最後にAppndixでは、29人の中から8人(8日間)を選んで、Managerの仕事の観察結果と考察が紹介されています。

一読しただけなので、内容の理解がまだまだ十分ではありませんので、折を見て読み直そうと思います。

なお、こちらのサイトはとても参考になりそうです。


2011年4月16日土曜日

The Myth of the Rational Market

本日は、The Myth of the Rational Market(邦題:合理的市場という神話/東洋経済新報社)を紹介します。

本書は、Finance理論の歴史的発展過程と金融市場の特性について、時系列で追っていくという画期的な本です。著者はジャーナリストなので記述は平易ですが、かといって、平易さを追求して学術的な面が疎かになっているわけではありません。その意味では傑出した本だと思います。

本書の中には、MBAでも学習するFinanceやEconomicsの概念を築いた人々が沢山出てきます。Risk(分散)とReturn(平均)の変数を用いてPortfolio理論の基礎を築いたH. Markowitz、CAPM理論を考え出したW. Sharp, J. Lintner, J. Mossin, MM理論で知られるF. Modligliani & M. Miller, Black Sholes Modelで有名なF. Black, M. Sholes, R. Merton, Arbitrage Modelの考案者でRWJの著者の一人でもあるS. Ross, Efficient Marketの代表格でK. Frenchとともに(Three) Factor Modelで知られるF. Farma,  Jensen's alphaやCorporate Governance論の領域でも有名なM. Jensen, CAPM批判のR. Rollなどなど。また、行動経済学のD. Kahneman & A.Tversky, R. Thalerといった面々も登場します。さらには、K. Arrow, M. Friedman, P. Samuelson, F. Hayekといった近代の経済学の基礎を築いた大御所も名を連ねます。

本書の内容は非常に濃いのでとても一言では表現できませんが、いくつか印象に残った部分を紹介いたします。

Finance理論は、市場が効率的かどうかについては関心は無く、効率的な市場を出発点として形成されていたという指摘です。
The overwhelming majority of research in finance in those days was no longer concerned with the question of whether markets were efficient. One just assumed that they were, and proceeded from there.

その理由の一つは、リスクを自然現象と捉えることで、可能性のある結果の分布図が(一定の範囲に)限定され、リスクが数学的に扱いやすくなるからです。
Risk was seen as a natural phenomenon, a scatter graph of potential outcomes that could be kept within bounds and manipulated mathematically.


しかし金融市場は自然現象ではなく人間が作り出したものです。そして、リスクを管理しようとする試みが、市場環境を変えてしまい、永遠に不安定なフィードバック・ループを生み出してしまいます。

Financial markets are not natural phenomena. They are man-made-made by men and women whose business is gazing into an uncertain, risky future. The act of managing risk in such an environment alters that environment, creating a never-stable feedback loop.

クォンツなどのエキスパートは、統計モデルは熟知しているものの市場での経験が浅く、一方、経験や知識・権限を持つ(金融業界の)お偉方たちは、統計モデルを理解していなかったと指摘しています。
These people(young quants) knew how to work statistical models, but they lacked the market experience needed to make informed judgments. Meanwhile, those with the experience, wisdom, and authority to make informed judgments-the bosses-didn't understand the statistical models.

Shillerは、「株価変動の予測が難しい」ということをもって「株価は正しい(はず)」と結論付けたことは論理の飛躍であり、「経済的思想の歴史の中で最も顕著な誤りのひとつである」と指摘しています。

The leap from observing that it is hard to predict stock price movements to concluding that those prices must therefore be right was, he declared at a conference in 1984, "one of the most remarkable errors in the history of economic thought.

最近の行動ファイナンスなどの研究により、「投資家の自信過剰」という要因が株価等の資産価格に影響を及ぼすことが実証されつつあります。しかしこの考え(自信過剰)は、資産価格理論ではありません。むしろ、「資産価格が本来の価格をなぜ上回るのか」を説明する考えであり、効率的市場仮説の概念と両立する考え方です。
Overconfidence doesn't get you to a theory of asset prices. It gets you to a theory of why asset prices overshoot their fundamental values-which in turn can coexist with a loose version of the efficient market hypothesis.

結局のところ、どの理論によっても市場の動きを統一的に説明することはできません。今ある考え方(新古典派,行動学派,情報の非対称性学派など)を組み合わせて理解していくしかないということになります。
・・・ and for now we have to make do with the muddle of neoclassical and behavioral and experimental and asymmetric-information economics and finance that we have.

そして重要なことは、市場参加者が高潔さという規範に従って行動しないと、市場は崩壊するということでしょう。
If market participants failed to follow a particular non-market-determined norm- integrity -markets wouldn't work. The market couldn't govern itself.

なお(本論から少しそれますが)、Finance理論の発展と同じくらい面白いのが、FinanceとEconomicsの理論や学者のせめぎ合い、そしてその中で発展した米国のBusiness Schoolに関する記述です。Harvard, Chicago, Whorton, MIT, Yaleはもとより、Rochester, Carnegie MellonといったBuisness Schoolに関する記述はとても興味深いものがありました。

優秀な研究者の下には(その人を慕って)優秀な人材が集まるということで、いわゆるApprentice System(徒弟制度)が重要だということが理解できます。 Warwickも著名な教授(研究者)を招聘して、どんどん知名度を上げて欲しいものです。最近、ランキング等がちょっと冴えないので・・・。


2011年4月2日土曜日

Game Theoryの入門書

Game Theoryは経済学(特にApplied Microeconomics)をはじめ工学、社会学、政治学、生物学といった分野に応用されています。

Game Theoryに関する入門書は沢山出版されていますが、少し突っ込んだ学習を行おうとする段になると、食い足りない感のある本も多いと感じています。ということで、自分が読んだ本の中からお勧めできる本格派の入門書を何冊かご紹介したいと思います。

(1) ゲーム理論入門/武藤滋夫/日経文庫 
(2) The Art of Strategy A. K. DexitB. J. Nalebuff 
(3) ゲーム理論・入門-人間社会の理解のために/岡田 章/有斐閣アルマ 
(4) 経営の経済学 /丸山 雅祥/有斐閣  


(1)はコンパクトな入門書ですが、非協力ゲームのみならず、協力ゲームや情報不完備ゲーム、学習と進化のゲームなど、Game Theoyの領域を一通り押さえています。紙幅の関係で説明が飛んでいる部分も所々ありますが、この「行間」を自分で埋めていくことにより、力がつくように思います。新書ですが今回取り上げた(入門書の)中では、レベル的には最も高い部類に属すると思います。手軽に読める本ではありませんが、本格的にGame Theoryを学ぶための導入として、是非お勧めしたい本です。

(2)は米国のMBA課程でも長年にわたって用いられている”Thinking Strategically(邦題:戦略思考とは何か)”という本の改訂版に当たる本です。翻訳版も昨年出ています。内容としては、Game Theoryを中心とした戦略全般に関する本です。ボリュームはそこそこありますが、身近な事例が数多く取り上げられており、楽しみながら読み進めることができます。理論的な厳密性よりも、Game Theoryがビジネスの場にどのように応用されるのか、という点に興味を持っている方には最適と思います。

(3)は上級書として定評のある「ゲーム理論(有斐閣)」の著者による入門書です。分かり易い記述ながらも理論的に高い水準を維持していますし、扱う範囲もかなり広くなっています。また、数学の利用も最小限に抑えてありますので、安心して読むことが出来ます。(1)と同じタイプの本ですが、(1)よりも解説が詳しくなっています。

(4)は以前別のBlogの記事で紹介したBusiness Economicsに関する入門書ですが、この本のGame Theory部分も大変分かり易い記述になっています。Economicsに全く触れたことが無く、かつ、数式嫌いの方には厳しいかもしれませんが、Game Theoryを含めBusiness Economicsのベースをきっちり身につけたい方には最適な本と思います(最近、改訂版が出たようです。)

今回ご紹介した本のうち、(2)はBusiness Personに特にお勧めの本、(1)と(3)はGame Theoryを理論的にしっかり学びたい方の導入本、(4)はGame Theoryを含めたBusiness Economicsを学びたい方の導入本としてお勧めです。


2011年3月26日土曜日

Business Schoolで学ばなかったこと

本日はJay. B. Barney(共著)のWhat I didin't Learn in Business Schoolです。Barney教授と言えば、RBV(Resource Based View)という経営戦略理論で大変有名な方です。まずは、Barney教授が教鞭をとるOhio State University(Fisher College of Business)のExecutive Educationからのビデオクリップです。





今回ご紹介する本はRBVの本というわけではなく、物語を通じた経営戦略の本です。MBA修了後にコンサルティング会社に入社した主人公が、コンサルティングの現場とBusiness Schoolで学んだことのギャップに戸惑いながらも、仕事を通じてコンサルタントの役割やチームワークの重要性といったことを学び、成長していく姿が描かれています。

ちなみに、この本のTitleは"What I didn't learn in Buisness School"であり、"Business School didn't teach・・・"ではありません。すなわち、Business Schoolで学んだこと(学ばなかったこと)については、すべて自己責任であるということです。もっと言えば、Business Schoolでは少なくとも(そのヒントは)提供しているものの、学んだ側がそれを十分生かしきれていないということかもしれません。本の序文には、以下のような戦略立案に関する珠玉の記述があります。
Strategy making is part science, part art, part intuition, part politics, part analysis, part change management, and part just hard work.
物語の主人公は、Business Schoolで沢山行うケース分析(Cracking the Case)と現実の仕事(コンサルティング)とは全く違うことを自覚していきます。現場では、様々な人の思惑、社内の権力構造、企業風土といった要素が複雑に絡み合っています。また、会社の事業や製品等のビジネスの仕組みに関しては、社内の人間の方が圧倒的に知識もありまた経験も豊富です。そうした中で、コンサルタントの果たす役割とは、(健全な懐疑心を持って)様々なバイアスに左右されることなく、客観的に戦略の評価を行うことであると理解します。また、現実のコンサルティングは、会社の将来の姿を形作る支援をするやりがいのある仕事であると感じます。Storyは(かなり脚色はあるものの)とても生き生きと描かれています。この辺りは、Barney教授も、もう一人の著者(Clifford女史)も、実際にコンサルティング経験が豊富なためでしょうか。

本書の想定する読者としては、「コンサルティング業界を希望するBusiness Schoolの卒業生」なのかもしれませんが、実際にコンサルティング経験のある方や経営企画部等で戦略立案に携わる方々にとっても、十分楽しめる内容だと思います。さらに、Business Schoolというと、様々な分析ツールのみを教える場であると「誤解」としている向きにも、是非本書を読んでいただきたいと思います。というのも、(本書でもいくつか指摘されていますが)各種の分析ツールの限界等については、実はBusiness Schoolではしっかりと教えているからです。

MBAに対する様々な批判がある中で、その一因として、教わった側が深い理解には至っていないということもあるかと思います。というのも、(1年とか2年とかの)期間の制約があるため、Business Schoolはどうしても詰め込み型の教育にならざるを得ないからです。また、試験やレポートなどもある以上、ある程度割り切って取り組む必要もあります。その結果、どうしても消化不良気味になったり近視眼的になりがちです。また、MBAを取得した自信の裏返しとして、ともすると慢心が生じる危険性もあります。

その意味で、MBAを修了した後、学んだ知識等を再確認しつつ今一度じっくりと考えてみることも必要と思います。そのヒントを与えてくれる本書は大変意義深いと思います。

この本の特徴は①それぞれのChapterがとても短いので短時間で読めること、②各Chapter毎に復習のための質問があることです。そして何といっても有難いのが、③巻末に参考文献が豊富に挙げられていることです。参考文献等はまだ読めていませんが、MBA時代に読んだものもいくつかあるので、時間を見つけつつ少しづつ読んでいこうと考えています。


2011年3月22日火曜日

Story Tellingと経営戦略

震災から約10日が経過しました。震災によって亡くなられた方はいまだに増え続けており、想像を絶する災害であったことに驚愕します。あらためて、震災による犠牲者の方々や遺族の方々に哀悼の意を申し上げます。

原発をはじめとしてまだまだ予断は許さない状況にありますが、周囲は少しづつ落ち着きを取り戻しつつあるようです。また、先週はアポイントの大半がキャンセルになったので、久しぶりに読書が出来ました。

唐突ですがストーリーとしての競争戦略(東洋経済新報社)という本が売れているようです。

この本を読んだことはないので内容についてはコメントできないのですが、書店でこの本を見かけたとき、ふと、「経営戦略におけるStory Tellingの役割」ということを思い出しました。というのも3年ほど前、Warwick Business School(WBS)で履修したStrategy and Practiceという戦略論の課目の中で、経営戦略におけるStory Tellingの役割について少し触れられていたことを思い出したためです。メイン教材のLesson Noteではわずか3ページほどの分量でしたが、推奨論文として挙げられていた以下の2つの論文を読んでみました。


Barry, D. and Elms, M. (1997) Strategy Retold: Toward a Narrative View of Strategic Discourse, Academy of Management Review, 22, pp. 429–52

Shaw, G.; Brown, R. and Bromiley, P. (1998) Strategic Stories: How 3M is Rewriting Business Planning, Harvard Business Review, May–June, pp. 2–8


どちらも非常に意義深い論文ですが、Barry and Elms(1997)の方はやや難解です。なお、(学術的な面に興味は無く)Storyの具体的メリットや活用法に興味のある方は、Chip & Dan HeathのMade to Stickなどを読まれることをお勧めします。Made to Stickには、Unexpected(意外性)、Credible(信憑性)という概念が紹介されていますが、Barry and Elms(1997)にもほぼ同じ概念として、Strategic Defamilialization,Strategic Credibilityといった概念が紹介されています。根っこの部分ではかなり共通項があると思いました。

ストーリーとしての競争戦略の本の内容とは全く関係ない話になってしまいました。