今回は、Henly MintzbergのManagingです。昨年の初めに買って途中まで読んで積読になっていた本書ですが、(先頃翻訳版も出たこともあり)気分を一新して通読してみました。
一言で言えば、MintzbergのSeminalな著書
The Nature of Managerial Work(1973)の現代版です。この本は今ではなかなか手に入り難いようなので、エッセンスを知るにはこちらの論文を読んでも良いと思います。
H. Mintzberg, The Manager's Job: Folklore and Fact,
Harvard Business Review, July-August 1975(1990 Reprint)
Mintzberg教授の視点と洞察力の秀逸さは今さら申し上げるまでもありませんが、それと同時にすごいと思うのは、
同じテーマを40年間研究できる情熱と粘り強さです。何事にも飽きっぽい私にとっては驚異的なことです。
まずは、今回ご紹介する
Managingの紹介動画がありますのでご覧ください。
本書は6章から構成されています。第1章は序章で、1973年の著書をベースに、Managerの仕事は今も昔もあまり変わっていないと主張します。そして、Managingの3つの側面として、有名なTriangle(Art, Science, Craft)が紹介されます。
Thus, ・・・ managing can be seen to take place within a triangle when art, craft, and the use of science meet(p.10).
本書では、Managerial Workを2つの側面から考察します。2つの側面とは、①仕事の特性(Characteristics)と②仕事の内容(Content)です。第2章では仕事の特性が、第3章では仕事の内容が扱われます。
第2章ではManagerの仕事の特性として、unrelenting pace, brevity & variety, fragmentation, orientation to action, informal & oral communication, covert control といった概念が説明されます。また、昨今のInternet(e-mail)の発展がManagerの仕事に与える影響にも言及します。
第3章は、Managerの仕事の内容を扱います。本書の理論的中核を成す部分で、Managerの仕事の内容に関する包括的なモデルが提唱されます。一般的に、Managerとは他人を通じて物事を行う人(get things done through other people)ですが、この考えをさらに進めて(人との距離感という観点から)、① Managing through Information ②Managing with People ③ Managing Action Directoryという3つのPlanesが提示されます。 ①が最も間接的、③が最も直接的なManagement Styleと言えるでしょうか。さらに、Managerは組織の内(Inside)と外(Outside)との接点を持っています。これらを組み合わせて(Managerの機能を整理して)、統合的なモデルが提示されます。
第4章は29人のManagerの仕事を実際に観察した中で、Managerの仕事を5つのContextsで整理していきます。5つのContextは、①Exrternal, ②Organization, ③Job, ④Temporal, ⑤Personです。ややDescriptiveな記述のため読み進めるのがやや大変ですが、最後に有名なTriangle(Art, Science, Craft)に関連付けられるので、すっきりと整理することが出来ます。
第5章の題名はThe Inescapable Conundrums of Managingです。Conundrumsというのは難問or謎といった意味でしょうか。再びマネージャーの仕事や役割の複雑性にスポットライトが当てられます。①Thinking Conundrums、②The Information Conundrums ③People Conundrums、④The Action Conundrums、⑤Overall Conundrumsという視点から考察が加えられます。
H. MintzbergとM. Porterは言わずと知れた経営戦略論のGuruでもありますが、二人の戦略の考え方にはかなりの違いが見られます。Porterは、経済学的な視点から戦略を科学的に捉える代表的な学者ですが、Mintzbergは、戦略を主観的・相対的・全方位的に捉えます。本書でも、Mintzbergは次のようにPorterを痛烈に批判しています。
When Michael Porter wrote in The Ecconomist that " I favor a set of analytic techniques to develop strategy"(1987), he was dead wrong: nobody ever developed a strategy through a technique( p.162).
結局、Managerの抱える難問(上記の6つ)については、これらを完全に排除したり完全に解消したりすることはできず、うまく折り合いをつけたり、部分的に解決していくということになります。
These paradoxes and predicaments, labyrinths and riddles, are built into managerial work — they are managing — and there they shall remain. They can be alleviated but never eliminated, reconciled but never resolved(p. 192).
6章のタイトルはManaging Effectivelyです。といっても、効果的なManagementを行う具体的な方法が示されるわけではありません。むしろその対極で、効果的なManagementのPanaceaなどは存在しないことが示されます。まず、(成功しているManagerを含め)Managerには皆欠点があり、ただ、その欠点が致命的になってないだけだと指摘します。そして、Managementの有効性を考えるための7つの概念(Energetic, Reflective, Collaborative, Analytic, Worldly, Proactive, Integtative)を用いたFrameworkが提示されます。次に、効果的なManagerの選定、評価、育成法が展開されます。特に育成については、(従来のBusiness Schoolの)教室ではManagerを育成できないという考えから、Manager育成のためのProgrammeである
International Master’s in Practicing Management の内容の紹介が中心となります。
最後にAppndixでは、29人の中から8人(8日間)を選んで、Managerの仕事の観察結果と考察が紹介されています。
一読しただけなので、内容の理解がまだまだ十分ではありませんので、折を見て読み直そうと思います。
なお、
こちらのサイトはとても参考になりそうです。