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2011年2月24日木曜日

Dan Ariely -Mckinsey Quarterly-

気がつくと、前回の更新からほぼ一ヶ月が経過してしまいました。今年になってから忙しい日々が続いていますが、今後は月2~3回のペースでは更新するようにしたいと思います。

さて、今回はMcKinsey Quarterlyで特集されているDan Ariely氏のインタビュー動画(Irrationality in the Workplace)です。内容については動画をご覧頂くとして、まずはDan Ariely氏の簡単な紹介から。

Dan Ariely氏は、Duke大学の教授でBehavioral Economistの第一人者です。2008年にはPlacebo現象の研究(高価なPlaceboの方が安価なPlaceboより効き目があるように感じること)によって、イグノーベル賞(医学賞)を受賞するなど、研究の切り口がとてもユニークです。Ariely氏は10代の頃、事故によって全身の70%に火傷を負うという重傷を負い、加えて、火傷で入院中に輸血によって感染症を患うなど、青春時代(10代・20代の頃)に長期にわたって非常に辛い経験をしています。こうした経験を通じて、人間の行動や人との関わりについて注意深く観察したり、深く考えるようになったようです。

「不合理な人間像」を想定するBehavioral Economicsは、ともすると伝統的な経済学に対する対立軸と捉えられることがありますが、こうした考え方は誤解を生み易いので注意が必要だと思います。「合理的な人間」と「不合理な人間」が別々に存在するわけではなく、同じ人間が(各種の局面で)合理的であったり不合理であったりするに過ぎません。伝統的な経済学と行動経済学は矛盾するものでなく、相互補完的な関係にあります。

さらに言えば、不合理であることが必ずしも悪いわけでもありません。例えば、人間に本来備わっている「他人を信頼する」という性質があります。一方、こうした信頼に対する裏切りに対しては非常に憤慨し、相手へ報復するといった行動に出ます。相手を信頼する行為も報復行為もそれ自体は不合理かもしれません。しかし、これらの組み合わせによって、(信頼を裏切ると結局は高くつくことによって)秩序ある社会生活を営むことが出来ます。
人間には本来、一種の公平感のようなものが備わっていて、公平感が侵害されると、自分が損をしてでも相手に報復しようとするという傾向があるというのは確かに納得できます。
公平感と言えば、以前読んだMichael SandelのJUSTICEも非常に面白かったので、また別の機会に紹介できればと思います。

一方、不合理性の持つマイナス面もあります。例えば、短期的な感情に駆られた不適切な行動が(感情がおさまった後にも)、Self-Herdingにより、長期にわたって持続する(=自己の行動パターンになる)いう危険性も指摘されています。人間は基本的に合理的だが、時として不合理な行動をとることもあるということを自覚し、マイナスとなる不合理性を出来る限り是正することが必要なのだと思います。

Ariely氏の著書であるPredictably Irrational(邦題:予想どおりに不合理)やThe Upside of Irrationality(邦題:不合理だからすべてがうまくいく)には、人間(の不合理)性に関する様々な興味深い実験が数多く記載されています。また、我々が陥りがちな罠についてもその解決策や心構えなども記述されています。加えて、ビジネスの現場では(科学の領域と異なり)、何が経営に役立つか(役立たないのか)といった点について、系統的な実験が驚くほど少ないと言います。そして、小規模で良いので、企業は(職場で)もっと沢山の実験をすべきであると主張します。

いずれにしても、様々な実験をベースにした興味深い書籍であり、Ariely氏の人間の対する深い愛情も垣間見ることもできますので、是非ご一読をお勧めします。