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2011年5月15日日曜日

Rational Choice

今回ご紹介するのはRational Choice。Itzhak Gilboa教授による決定理論(Decision Theory)の入門書です。

150頁弱のコンパクトな本ですが、寓話や対話を交えながら、分かり易く、かつ、深い議論が展開されます。冒頭はイソップ物語の「酸っぱい葡萄」の話。高い枝にぶら下がっている葡萄を取ろうとして何度かTryするものの、葡萄を取れなかったキツネは、「あの葡萄は酸っぱいに違いない」と言ってその場を去ります。これは、feasibility(≒can)とdesirability(≒want)を混同している典型例として紹介されます。そして、Rationalityとはこの2つを区別して扱うことであると指摘します。もっとも、不確実性のある状況下では、この2つの区別だけでは不十分なこと、また、現実的には両者の区別はかなり曖昧であるということも指摘されます。

本書では、Rational Choiceに関するいくつかのモデルに対する洞察がなされます。Gilboa教授は、モデルの有用性だけでなく限界にも言及します。そして、こうしたモデルを理論として考えるのではなく、paradigm(a system of thought)として捉えるべきであると主張します。paradigmは我々に、世の中の様々な事象を考察する思考方法を提供してくれます。

序文には、「高校卒業程度の学力があれば十分読める」と書かれており、数学はほとんど使っていません。しかし、理論的にはかなり高水準です。特にⅢ章(Group Choices)などは、(重要な指摘事項がさらっと書いてあったりしますので)きっちり理解するためにはある程度の前提知識が必要になると思われます。

なお、数学の補足説明や演習問題(及び解答)がWeb上のAppendixesという形で用意されているのも有難いです。今はこれを少しづつ読み進めています。

(目次)
I Optimization
 1 Feasibility and Desirability
 2 Utility Maximization
 3 Constrained Optimization
 
II Risk and Uncertainty
 4 Expected Utility
 5 Probability and Statistics
 
III Group Choices
 6 Aggregation of Preferences
 7 Games and Equilibria
 8 Free Markets
 
IV Rationality and Emotions
 9 Evolutionary View of Emotions
10 Utility and Well-Being
 
Online Appendixes
A Mathematical Preliminaries
B Formal Models
C Exercises
D Solutions


2011年5月14日土曜日

The Black Swan

今さらながら、THE BLACK SWAN(Nassim Nicholas Taleb)を読んでいます。同著者のFooled by Randomnessは以前読んでいたのですが、BLACK SWANの方は読んでいませんでした。

BLACK SWANを読もうと思ったのは、映画のBlack Swan(ブラック・スワン)で思い出したからです。(ちなみに、映画は見ていませんし、映画と本は内容的に全く関係ありません。)

内容的には、Fooled by RandomnessThe Mith of the Ratinal Marketなどとも被る部分も多く、また、最近では類書もいくつか出ていますので、新鮮味はあまり感じませんでした。もう少し早く読んでいたら、違った印象だったと思います。

なお、本書は英語的には結構難しく、西洋文化や歴史的な背景知識を前提に書かれている部分もあるので、東洋人である日本人には案外読みにくいのではないかと感じました。


2011年4月24日日曜日

Managing(H. Mintzberg)

今回は、Henly MintzbergのManagingです。昨年の初めに買って途中まで読んで積読になっていた本書ですが、(先頃翻訳版も出たこともあり)気分を一新して通読してみました。

一言で言えば、MintzbergのSeminalな著書The Nature of Managerial Work(1973)の現代版です。この本は今ではなかなか手に入り難いようなので、エッセンスを知るにはこちらの論文を読んでも良いと思います。

H. Mintzberg, The Manager's Job: Folklore and Fact, Harvard Business Review, July-August 1975(1990 Reprint)

Mintzberg教授の視点と洞察力の秀逸さは今さら申し上げるまでもありませんが、それと同時にすごいと思うのは、同じテーマを40年間研究できる情熱と粘り強さです。何事にも飽きっぽい私にとっては驚異的なことです。

まずは、今回ご紹介するManagingの紹介動画がありますのでご覧ください。



本書は6章から構成されています。第1章は序章で、1973年の著書をベースに、Managerの仕事は今も昔もあまり変わっていないと主張します。そして、Managingの3つの側面として、有名なTriangle(Art, Science, Craft)が紹介されます。
Thus, ・・・ managing can be seen to take place within a triangle when art, craft, and the use of science meet(p.10).
本書では、Managerial Workを2つの側面から考察します。2つの側面とは、①仕事の特性(Characteristics)と②仕事の内容(Content)です。第2章では仕事の特性が、第3章では仕事の内容が扱われます。


第2章ではManagerの仕事の特性として、unrelenting pace, brevity & variety, fragmentation, orientation to action, informal & oral communication, covert control といった概念が説明されます。また、昨今のInternet(e-mail)の発展がManagerの仕事に与える影響にも言及します。


第3章は、Managerの仕事の内容を扱います。本書の理論的中核を成す部分で、Managerの仕事の内容に関する包括的なモデルが提唱されます。一般的に、Managerとは他人を通じて物事を行う人(get things done through other people)ですが、この考えをさらに進めて(人との距離感という観点から)、① Managing through Information ②Managing with People ③ Managing Action Directoryという3つのPlanesが提示されます。 ①が最も間接的、③が最も直接的なManagement Styleと言えるでしょうか。さらに、Managerは組織の内(Inside)と外(Outside)との接点を持っています。これらを組み合わせて(Managerの機能を整理して)、統合的なモデルが提示されます。


第4章は29人のManagerの仕事を実際に観察した中で、Managerの仕事を5つのContextsで整理していきます。5つのContextは、①Exrternal, ②Organization, ③Job, ④Temporal, ⑤Personです。ややDescriptiveな記述のため読み進めるのがやや大変ですが、最後に有名なTriangle(Art, Science, Craft)に関連付けられるので、すっきりと整理することが出来ます。


第5章の題名はThe Inescapable Conundrums of Managingです。Conundrumsというのは難問or謎といった意味でしょうか。再びマネージャーの仕事や役割の複雑性にスポットライトが当てられます。①Thinking Conundrums、②The Information Conundrums ③People Conundrums、④The Action Conundrums、⑤Overall Conundrumsという視点から考察が加えられます。

H. MintzbergとM. Porterは言わずと知れた経営戦略論のGuruでもありますが、二人の戦略の考え方にはかなりの違いが見られます。Porterは、経済学的な視点から戦略を科学的に捉える代表的な学者ですが、Mintzbergは、戦略を主観的・相対的・全方位的に捉えます。本書でも、Mintzbergは次のようにPorterを痛烈に批判しています。

When Michael Porter wrote in The Ecconomist that " I favor a set of analytic techniques to develop strategy"(1987), he was dead wrong: nobody ever developed a strategy through a technique( p.162). 

結局、Managerの抱える難問(上記の6つ)については、これらを完全に排除したり完全に解消したりすることはできず、うまく折り合いをつけたり、部分的に解決していくということになります。
These paradoxes and predicaments, labyrinths and riddles, are built into managerial work — they are managing — and there they shall remain. They can be alleviated but never eliminated, reconciled but never resolved(p. 192).

6章のタイトルはManaging Effectivelyです。といっても、効果的なManagementを行う具体的な方法が示されるわけではありません。むしろその対極で、効果的なManagementのPanaceaなどは存在しないことが示されます。まず、(成功しているManagerを含め)Managerには皆欠点があり、ただ、その欠点が致命的になってないだけだと指摘します。そして、Managementの有効性を考えるための7つの概念(Energetic, Reflective, Collaborative, Analytic, Worldly, Proactive, Integtative)を用いたFrameworkが提示されます。次に、効果的なManagerの選定、評価、育成法が展開されます。特に育成については、(従来のBusiness Schoolの)教室ではManagerを育成できないという考えから、Manager育成のためのProgrammeであるInternational Master’s in Practicing Management の内容の紹介が中心となります。

最後にAppndixでは、29人の中から8人(8日間)を選んで、Managerの仕事の観察結果と考察が紹介されています。

一読しただけなので、内容の理解がまだまだ十分ではありませんので、折を見て読み直そうと思います。

なお、こちらのサイトはとても参考になりそうです。


2011年4月16日土曜日

The Myth of the Rational Market

本日は、The Myth of the Rational Market(邦題:合理的市場という神話/東洋経済新報社)を紹介します。

本書は、Finance理論の歴史的発展過程と金融市場の特性について、時系列で追っていくという画期的な本です。著者はジャーナリストなので記述は平易ですが、かといって、平易さを追求して学術的な面が疎かになっているわけではありません。その意味では傑出した本だと思います。

本書の中には、MBAでも学習するFinanceやEconomicsの概念を築いた人々が沢山出てきます。Risk(分散)とReturn(平均)の変数を用いてPortfolio理論の基礎を築いたH. Markowitz、CAPM理論を考え出したW. Sharp, J. Lintner, J. Mossin, MM理論で知られるF. Modligliani & M. Miller, Black Sholes Modelで有名なF. Black, M. Sholes, R. Merton, Arbitrage Modelの考案者でRWJの著者の一人でもあるS. Ross, Efficient Marketの代表格でK. Frenchとともに(Three) Factor Modelで知られるF. Farma,  Jensen's alphaやCorporate Governance論の領域でも有名なM. Jensen, CAPM批判のR. Rollなどなど。また、行動経済学のD. Kahneman & A.Tversky, R. Thalerといった面々も登場します。さらには、K. Arrow, M. Friedman, P. Samuelson, F. Hayekといった近代の経済学の基礎を築いた大御所も名を連ねます。

本書の内容は非常に濃いのでとても一言では表現できませんが、いくつか印象に残った部分を紹介いたします。

Finance理論は、市場が効率的かどうかについては関心は無く、効率的な市場を出発点として形成されていたという指摘です。
The overwhelming majority of research in finance in those days was no longer concerned with the question of whether markets were efficient. One just assumed that they were, and proceeded from there.

その理由の一つは、リスクを自然現象と捉えることで、可能性のある結果の分布図が(一定の範囲に)限定され、リスクが数学的に扱いやすくなるからです。
Risk was seen as a natural phenomenon, a scatter graph of potential outcomes that could be kept within bounds and manipulated mathematically.


しかし金融市場は自然現象ではなく人間が作り出したものです。そして、リスクを管理しようとする試みが、市場環境を変えてしまい、永遠に不安定なフィードバック・ループを生み出してしまいます。

Financial markets are not natural phenomena. They are man-made-made by men and women whose business is gazing into an uncertain, risky future. The act of managing risk in such an environment alters that environment, creating a never-stable feedback loop.

クォンツなどのエキスパートは、統計モデルは熟知しているものの市場での経験が浅く、一方、経験や知識・権限を持つ(金融業界の)お偉方たちは、統計モデルを理解していなかったと指摘しています。
These people(young quants) knew how to work statistical models, but they lacked the market experience needed to make informed judgments. Meanwhile, those with the experience, wisdom, and authority to make informed judgments-the bosses-didn't understand the statistical models.

Shillerは、「株価変動の予測が難しい」ということをもって「株価は正しい(はず)」と結論付けたことは論理の飛躍であり、「経済的思想の歴史の中で最も顕著な誤りのひとつである」と指摘しています。

The leap from observing that it is hard to predict stock price movements to concluding that those prices must therefore be right was, he declared at a conference in 1984, "one of the most remarkable errors in the history of economic thought.

最近の行動ファイナンスなどの研究により、「投資家の自信過剰」という要因が株価等の資産価格に影響を及ぼすことが実証されつつあります。しかしこの考え(自信過剰)は、資産価格理論ではありません。むしろ、「資産価格が本来の価格をなぜ上回るのか」を説明する考えであり、効率的市場仮説の概念と両立する考え方です。
Overconfidence doesn't get you to a theory of asset prices. It gets you to a theory of why asset prices overshoot their fundamental values-which in turn can coexist with a loose version of the efficient market hypothesis.

結局のところ、どの理論によっても市場の動きを統一的に説明することはできません。今ある考え方(新古典派,行動学派,情報の非対称性学派など)を組み合わせて理解していくしかないということになります。
・・・ and for now we have to make do with the muddle of neoclassical and behavioral and experimental and asymmetric-information economics and finance that we have.

そして重要なことは、市場参加者が高潔さという規範に従って行動しないと、市場は崩壊するということでしょう。
If market participants failed to follow a particular non-market-determined norm- integrity -markets wouldn't work. The market couldn't govern itself.

なお(本論から少しそれますが)、Finance理論の発展と同じくらい面白いのが、FinanceとEconomicsの理論や学者のせめぎ合い、そしてその中で発展した米国のBusiness Schoolに関する記述です。Harvard, Chicago, Whorton, MIT, Yaleはもとより、Rochester, Carnegie MellonといったBuisness Schoolに関する記述はとても興味深いものがありました。

優秀な研究者の下には(その人を慕って)優秀な人材が集まるということで、いわゆるApprentice System(徒弟制度)が重要だということが理解できます。 Warwickも著名な教授(研究者)を招聘して、どんどん知名度を上げて欲しいものです。最近、ランキング等がちょっと冴えないので・・・。


2011年4月2日土曜日

Game Theoryの入門書

Game Theoryは経済学(特にApplied Microeconomics)をはじめ工学、社会学、政治学、生物学といった分野に応用されています。

Game Theoryに関する入門書は沢山出版されていますが、少し突っ込んだ学習を行おうとする段になると、食い足りない感のある本も多いと感じています。ということで、自分が読んだ本の中からお勧めできる本格派の入門書を何冊かご紹介したいと思います。

(1) ゲーム理論入門/武藤滋夫/日経文庫 
(2) The Art of Strategy A. K. DexitB. J. Nalebuff 
(3) ゲーム理論・入門-人間社会の理解のために/岡田 章/有斐閣アルマ 
(4) 経営の経済学 /丸山 雅祥/有斐閣  


(1)はコンパクトな入門書ですが、非協力ゲームのみならず、協力ゲームや情報不完備ゲーム、学習と進化のゲームなど、Game Theoyの領域を一通り押さえています。紙幅の関係で説明が飛んでいる部分も所々ありますが、この「行間」を自分で埋めていくことにより、力がつくように思います。新書ですが今回取り上げた(入門書の)中では、レベル的には最も高い部類に属すると思います。手軽に読める本ではありませんが、本格的にGame Theoryを学ぶための導入として、是非お勧めしたい本です。

(2)は米国のMBA課程でも長年にわたって用いられている”Thinking Strategically(邦題:戦略思考とは何か)”という本の改訂版に当たる本です。翻訳版も昨年出ています。内容としては、Game Theoryを中心とした戦略全般に関する本です。ボリュームはそこそこありますが、身近な事例が数多く取り上げられており、楽しみながら読み進めることができます。理論的な厳密性よりも、Game Theoryがビジネスの場にどのように応用されるのか、という点に興味を持っている方には最適と思います。

(3)は上級書として定評のある「ゲーム理論(有斐閣)」の著者による入門書です。分かり易い記述ながらも理論的に高い水準を維持していますし、扱う範囲もかなり広くなっています。また、数学の利用も最小限に抑えてありますので、安心して読むことが出来ます。(1)と同じタイプの本ですが、(1)よりも解説が詳しくなっています。

(4)は以前別のBlogの記事で紹介したBusiness Economicsに関する入門書ですが、この本のGame Theory部分も大変分かり易い記述になっています。Economicsに全く触れたことが無く、かつ、数式嫌いの方には厳しいかもしれませんが、Game Theoryを含めBusiness Economicsのベースをきっちり身につけたい方には最適な本と思います(最近、改訂版が出たようです。)

今回ご紹介した本のうち、(2)はBusiness Personに特にお勧めの本、(1)と(3)はGame Theoryを理論的にしっかり学びたい方の導入本、(4)はGame Theoryを含めたBusiness Economicsを学びたい方の導入本としてお勧めです。


2011年3月26日土曜日

Business Schoolで学ばなかったこと

本日はJay. B. Barney(共著)のWhat I didin't Learn in Business Schoolです。Barney教授と言えば、RBV(Resource Based View)という経営戦略理論で大変有名な方です。まずは、Barney教授が教鞭をとるOhio State University(Fisher College of Business)のExecutive Educationからのビデオクリップです。





今回ご紹介する本はRBVの本というわけではなく、物語を通じた経営戦略の本です。MBA修了後にコンサルティング会社に入社した主人公が、コンサルティングの現場とBusiness Schoolで学んだことのギャップに戸惑いながらも、仕事を通じてコンサルタントの役割やチームワークの重要性といったことを学び、成長していく姿が描かれています。

ちなみに、この本のTitleは"What I didn't learn in Buisness School"であり、"Business School didn't teach・・・"ではありません。すなわち、Business Schoolで学んだこと(学ばなかったこと)については、すべて自己責任であるということです。もっと言えば、Business Schoolでは少なくとも(そのヒントは)提供しているものの、学んだ側がそれを十分生かしきれていないということかもしれません。本の序文には、以下のような戦略立案に関する珠玉の記述があります。
Strategy making is part science, part art, part intuition, part politics, part analysis, part change management, and part just hard work.
物語の主人公は、Business Schoolで沢山行うケース分析(Cracking the Case)と現実の仕事(コンサルティング)とは全く違うことを自覚していきます。現場では、様々な人の思惑、社内の権力構造、企業風土といった要素が複雑に絡み合っています。また、会社の事業や製品等のビジネスの仕組みに関しては、社内の人間の方が圧倒的に知識もありまた経験も豊富です。そうした中で、コンサルタントの果たす役割とは、(健全な懐疑心を持って)様々なバイアスに左右されることなく、客観的に戦略の評価を行うことであると理解します。また、現実のコンサルティングは、会社の将来の姿を形作る支援をするやりがいのある仕事であると感じます。Storyは(かなり脚色はあるものの)とても生き生きと描かれています。この辺りは、Barney教授も、もう一人の著者(Clifford女史)も、実際にコンサルティング経験が豊富なためでしょうか。

本書の想定する読者としては、「コンサルティング業界を希望するBusiness Schoolの卒業生」なのかもしれませんが、実際にコンサルティング経験のある方や経営企画部等で戦略立案に携わる方々にとっても、十分楽しめる内容だと思います。さらに、Business Schoolというと、様々な分析ツールのみを教える場であると「誤解」としている向きにも、是非本書を読んでいただきたいと思います。というのも、(本書でもいくつか指摘されていますが)各種の分析ツールの限界等については、実はBusiness Schoolではしっかりと教えているからです。

MBAに対する様々な批判がある中で、その一因として、教わった側が深い理解には至っていないということもあるかと思います。というのも、(1年とか2年とかの)期間の制約があるため、Business Schoolはどうしても詰め込み型の教育にならざるを得ないからです。また、試験やレポートなどもある以上、ある程度割り切って取り組む必要もあります。その結果、どうしても消化不良気味になったり近視眼的になりがちです。また、MBAを取得した自信の裏返しとして、ともすると慢心が生じる危険性もあります。

その意味で、MBAを修了した後、学んだ知識等を再確認しつつ今一度じっくりと考えてみることも必要と思います。そのヒントを与えてくれる本書は大変意義深いと思います。

この本の特徴は①それぞれのChapterがとても短いので短時間で読めること、②各Chapter毎に復習のための質問があることです。そして何といっても有難いのが、③巻末に参考文献が豊富に挙げられていることです。参考文献等はまだ読めていませんが、MBA時代に読んだものもいくつかあるので、時間を見つけつつ少しづつ読んでいこうと考えています。


2011年3月22日火曜日

Story Tellingと経営戦略

震災から約10日が経過しました。震災によって亡くなられた方はいまだに増え続けており、想像を絶する災害であったことに驚愕します。あらためて、震災による犠牲者の方々や遺族の方々に哀悼の意を申し上げます。

原発をはじめとしてまだまだ予断は許さない状況にありますが、周囲は少しづつ落ち着きを取り戻しつつあるようです。また、先週はアポイントの大半がキャンセルになったので、久しぶりに読書が出来ました。

唐突ですがストーリーとしての競争戦略(東洋経済新報社)という本が売れているようです。

この本を読んだことはないので内容についてはコメントできないのですが、書店でこの本を見かけたとき、ふと、「経営戦略におけるStory Tellingの役割」ということを思い出しました。というのも3年ほど前、Warwick Business School(WBS)で履修したStrategy and Practiceという戦略論の課目の中で、経営戦略におけるStory Tellingの役割について少し触れられていたことを思い出したためです。メイン教材のLesson Noteではわずか3ページほどの分量でしたが、推奨論文として挙げられていた以下の2つの論文を読んでみました。


Barry, D. and Elms, M. (1997) Strategy Retold: Toward a Narrative View of Strategic Discourse, Academy of Management Review, 22, pp. 429–52

Shaw, G.; Brown, R. and Bromiley, P. (1998) Strategic Stories: How 3M is Rewriting Business Planning, Harvard Business Review, May–June, pp. 2–8


どちらも非常に意義深い論文ですが、Barry and Elms(1997)の方はやや難解です。なお、(学術的な面に興味は無く)Storyの具体的メリットや活用法に興味のある方は、Chip & Dan HeathのMade to Stickなどを読まれることをお勧めします。Made to Stickには、Unexpected(意外性)、Credible(信憑性)という概念が紹介されていますが、Barry and Elms(1997)にもほぼ同じ概念として、Strategic Defamilialization,Strategic Credibilityといった概念が紹介されています。根っこの部分ではかなり共通項があると思いました。

ストーリーとしての競争戦略の本の内容とは全く関係ない話になってしまいました。


2011年3月16日水曜日

東北地方太平洋沖地震

先週の金曜日の午後、かつてないほど大きな自然災害が起きました。
この度の地震により被災されました方々に心よりお見舞い申し上げます。

私の家族は幸いなことに全員無事でした。また、被災地に住む数人の知人とも週明けまでには連絡がとれ、知人は全員無事であることが確認できました。詳しい状況までは分かりませんが、まずは、本当に安堵しました。

首都圏は被災地からかなり離れていたとはいえ、今までにない大きな揺れを経験しました。一瞬ではありますが、「死」が頭の中をよぎりました。頻度が少なくなったとは言え、現在も余震が続いています。

首都圏でさえこの有様ですから、東北地方の本震やその後の余震の恐怖は想像を絶するものがあります。そして、地震から津波が発生するまでの時間の短さと津波の想像を絶する破壊力・・・。言葉では表現できません。また、厳しい気象条件や生活必需品等が著しく不足している中で、避難所生活を送られている方々の疲労・不安等を考えると本当に心が痛みます。

今回の地震と津波で、Warwick Business Schoolや海外にいるMBA時代の何人もの同窓生から、安否確認と励ましのメールを頂きました。また、赤十字等を通じて義捐金を送る旨の連絡も相次いでありました。本当に心強い思いがします。

首都圏でも輪番制の計画停電の実施を含め不安な要素は沢山ありますが、被災地の方々のご苦労や不安に比べれば、こうした不便さや不安など比較にならないと思います。私自身、大したことが出来るわけではありませんが、できる限りの支援と協力をしようと考えています。

こういう時期だからこそ、日本人としての誇り・我慢強さ・粘り強さを発揮し、我々が一致協力することが求められていると思います。復旧に向けた一致団結した取り組み・意識変革を通じて、日本がより良い国・力強い国になることを確信しています。

2011年3月6日日曜日

定着するIdeaの作り方とIdeaの効果的な伝え方

今回は記憶に残り、人々の行動を促す優れたIdeaの作り方と自分の考えをどのようにしたら相手に受け入れてもらいやすくなるのか、というテーマを扱った2冊の本をご紹介します。

最初は、Chip&Dan HeathMede to Stick 。定着しやすいIdeaを如何にして作り上げるかという観点から書かれた本です。この本では、SUCCES(S)の頭文字をとって、Ideaを定着させるためには、Short(簡潔性)、Unexpected(意外性)、Concreat(具体性)、Credible(信憑性)、Emotion(感動・感情)、Story(物語)の6つの要素の(複数の)組み合わせが必要であると主張します。

例えば、簡潔性とは単に分かり易いというだけはなく、コアとなるメッセージを明確化し、優先順位をつけることを意味します。また、意外性には相手の注意を喚起し、好奇心を引き出すという効果があります。

SUCCES(S)の条件を見事に満たした例として、1961年のJohn F. Kennedyが行ったMan on the Moonのスピーチが紹介されています。
I believe that this nation should commit itself to achieving the goal, before this decade is out, of landing a man on the Moon and returning him safely to the Earth.'

2冊目の本はChange Management やLeadershipの分野のGuruであるKotter教授の著書。J. Kotter&L. WhiteheadBuy-Inです。こちらは、自分の考えをどうやって相手に受け入れてもらえるかに関する本です。Made to Stickとテーマは似ていますが、Buy-Inは、優れたIdeaを台無しにしようとする4つの脅威(Fear Mongering, Delay, Confusion,  Ridicule(or Character Assassination)への対応を通じて、Ideaを受け入れてもらうために必要なヒントが述べられています。

前半は、とある市のTown Meetingから始まります。市の図書館に対して地元コンピュータ会社から(一定の条件の下)PCの寄付を行ってもよいという提案が持ちかけられます。(予算が限られている)市の図書館にとっては願ってもない提案(Good Idea)です。しかし、如何にGood Ideaであっても、上記4つの脅威のように、Idea実現を阻む障害があります。市営図書館の諮問機関のメンバーの一員である主人公が、様々な障害に対処しながら、この提案を議場で受け入れてもらうまでのStoryが描かれています。後半は、前半のStoryに基づいた具体的な処方箋が述べられます。

重要な点は、①(参加者全員に)敬意をもって対応すること、②予想される反対意見等に対して、事前に準備をしておくこと、③正直・率直・簡潔に回答すること、④反対する人へ意識を向けるのではなく、聴衆(参加者)全体を見渡すことであると指摘しています。

特に印象深かったのは、④に関連して、ともすると敵意や排除の対象として見られる不満分子を議論の場でどのように扱うのかという点です。彼らを説得しようとするのではなく、議論の中でうまく対処することを通じて、議案に関心のなかった(大多数の)層の関心を高め、また、当初から議案に好意的だった人たちのコミットメントを一層高めるという効果が期待できるという点は非常に納得性が高いものでした。

Mede to Stick が定着し易いIdea作りというStaticな点から書かれているのに対し、Buy InはInteractiveな状況の中で、いかにしてIdeaを受け入れてもらうかというDynamicな視点が重視されています。この2冊は相互補完関係(Complementary Relationship)にあるとも言えますので、併せて読んでいただくと理解が深まると思います。

なお、上記2冊の本に関連したWeb Siteも用意されていますので、併せてご紹介します。

Made To Stick  ☛ madetostick. com
Buy-In ☛ kotterinternational.com/buyin




2011年2月24日木曜日

Dan Ariely -Mckinsey Quarterly-

気がつくと、前回の更新からほぼ一ヶ月が経過してしまいました。今年になってから忙しい日々が続いていますが、今後は月2~3回のペースでは更新するようにしたいと思います。

さて、今回はMcKinsey Quarterlyで特集されているDan Ariely氏のインタビュー動画(Irrationality in the Workplace)です。内容については動画をご覧頂くとして、まずはDan Ariely氏の簡単な紹介から。

Dan Ariely氏は、Duke大学の教授でBehavioral Economistの第一人者です。2008年にはPlacebo現象の研究(高価なPlaceboの方が安価なPlaceboより効き目があるように感じること)によって、イグノーベル賞(医学賞)を受賞するなど、研究の切り口がとてもユニークです。Ariely氏は10代の頃、事故によって全身の70%に火傷を負うという重傷を負い、加えて、火傷で入院中に輸血によって感染症を患うなど、青春時代(10代・20代の頃)に長期にわたって非常に辛い経験をしています。こうした経験を通じて、人間の行動や人との関わりについて注意深く観察したり、深く考えるようになったようです。

「不合理な人間像」を想定するBehavioral Economicsは、ともすると伝統的な経済学に対する対立軸と捉えられることがありますが、こうした考え方は誤解を生み易いので注意が必要だと思います。「合理的な人間」と「不合理な人間」が別々に存在するわけではなく、同じ人間が(各種の局面で)合理的であったり不合理であったりするに過ぎません。伝統的な経済学と行動経済学は矛盾するものでなく、相互補完的な関係にあります。

さらに言えば、不合理であることが必ずしも悪いわけでもありません。例えば、人間に本来備わっている「他人を信頼する」という性質があります。一方、こうした信頼に対する裏切りに対しては非常に憤慨し、相手へ報復するといった行動に出ます。相手を信頼する行為も報復行為もそれ自体は不合理かもしれません。しかし、これらの組み合わせによって、(信頼を裏切ると結局は高くつくことによって)秩序ある社会生活を営むことが出来ます。
人間には本来、一種の公平感のようなものが備わっていて、公平感が侵害されると、自分が損をしてでも相手に報復しようとするという傾向があるというのは確かに納得できます。
公平感と言えば、以前読んだMichael SandelのJUSTICEも非常に面白かったので、また別の機会に紹介できればと思います。

一方、不合理性の持つマイナス面もあります。例えば、短期的な感情に駆られた不適切な行動が(感情がおさまった後にも)、Self-Herdingにより、長期にわたって持続する(=自己の行動パターンになる)いう危険性も指摘されています。人間は基本的に合理的だが、時として不合理な行動をとることもあるということを自覚し、マイナスとなる不合理性を出来る限り是正することが必要なのだと思います。

Ariely氏の著書であるPredictably Irrational(邦題:予想どおりに不合理)やThe Upside of Irrationality(邦題:不合理だからすべてがうまくいく)には、人間(の不合理)性に関する様々な興味深い実験が数多く記載されています。また、我々が陥りがちな罠についてもその解決策や心構えなども記述されています。加えて、ビジネスの現場では(科学の領域と異なり)、何が経営に役立つか(役立たないのか)といった点について、系統的な実験が驚くほど少ないと言います。そして、小規模で良いので、企業は(職場で)もっと沢山の実験をすべきであると主張します。

いずれにしても、様々な実験をベースにした興味深い書籍であり、Ariely氏の人間の対する深い愛情も垣間見ることもできますので、是非ご一読をお勧めします。


2011年1月23日日曜日

Branding(HBR12月号)より

今回も前回に続き、Harvard Business Review(HBR)の中から記事を紹介します。ちなみに、Onlineでは最新版(2011年1月~2月号)が読めるのですが、紙ベースのものはまだ届いておらず、手許の最新版は昨年の12月号でです。

12月号はBrandingの特集です。個人的には、Marketing活動そのものにはあまり接点がありませんが、経営戦略の中核的な要素であるため、関心を持っている分野です。
今回の特集を一言でいえば、BrandingにおけるSocial Mediaの重要性です。特に、Branding in The Degital AgeというMcKinseyの方が書いた記事はなかなか興味深いものでした。ここでは、伝統的なAIDMAに代表されるような消費者の選択肢が(購入に至るまでに)徐々に絞り込まれていくFunnel のようなモデルではなく、消費者とBrandの継続的な関わり合いを重視したConsumer Dicision Journey(CDJ)というモデルが提唱されています。特に、消費者の購入によって終結するFunnel Modelでは、購入後における消費者とBrandとの結びつきという視点が欠落していること、購入後におけるSocial Mediaの役割が非常に大きいことが指摘されています。

いわゆる口コミ(word of mouth)は昔から重要だったわけですが、現代においてこの機能を持つSocial Mediaの重要性を認識することは、Marketing担当者にとって不可欠であると指摘しています。さらに、各種のメディア間におけるマーケティング支出の配分についてもCDJに対応して見直す必要があると指摘しています。

なお、McKinsey Quarterlyの2010年12月号には、同じ方の書いた"Beyond paid media: Marketing’s new vocabulary"という記事があります。こちらは、Media( 5種類)に応じた、Marketing予算の配分に関する提案がされています。なお、Audioでも記事の概要を聴くことができます。

2011年1月13日木曜日

HBRの記事から

今回は、Harvard Business Review(HBR)のJanuary–Februaryの中から戦略論の大御所 Michael E. Porter(Mark R. Kramerとの共著)のArticleであるThe Big Idea: Creating Shared Valueについてとりあげたいと思います。

今回の記事を読んで、「Porter も随分変わったな~」という印象を持ちました。Porterといえば、5 ForcesやValue Chainなどを駆使して、如何にして(競合企業を出し抜いて)持続的な競争優位を実現するか、という戦略論を精緻に展開する点に特徴がありました。

しかし、最近の短期的な財務目標(利益)を目的とした企業活動、従業員や(地域)社会の便益を犠牲にして利益の最大化を図る企業活動は基本的に誤りであり、こうした行為は企業の長期的な利益や競争優位の実現には寄与しないと批判します。(周囲の利益を犠牲にして自社の利益を追求する)偏狭な資本主義から脱し、より広く、長期的な視点から資本主義を捉えなおすことが必要というわけです。

今回はShared Valueという新しい概念(概念自体は2006年のArticleで登場)を提唱しています。Shared Valueとは簡単に言えば、自社の長期的利益の実現を通じて、同時に、社会全体の便益や経済状態(生活水準)も向上させるという方針あるいは企業活動を意味します。要は社会の利益と会社の利益はtrade-offではなく、両立できるものと捉えるわけです。Shared Valueの追求を通じて、持続的な経済成長が実現できると主張します。

企業の具体的事例やMicrofinanceなどの新しい分野への取り組みを通じて、先進的な企業が如何にしてShared Valueを実現しているのかを紹介しています。一つの具体例として、UnileverのProject Shaktiがとりあげられています。

Shared Valueと似たような概念にCSRがありますが、両者は異なると主張します。CSRは主に企業のReputationに関係し、本業との関連性が薄いものであるのに対し、Shared Valueは企業本来の活動(得意とする領域での活動)を通じて、自社と地域社会の双方の利益を極力大きくすることを意味します。換言すれば、CSRは一定の大きさのPieを企業と社会との間でどのようにシェアするかという配分の問題であるのに対して、Shared ValueはPie自体を大きくするという発想ということでしょうか。

さらに、Shared Valueを追求するためには、新しいMind-setを持った社会起業家の育成が必要であり、Business Schoolも従来の狭い資本主義的な価値観に基づくカリキュラム編成ではなく、新しい視点からカリキュラムを見直す必要があると指摘しています。

とは言え、さすがに経済学者らしく(PorterはHarvardで経済学博士号を取得しています。)、Qualitativeなものではなく、Economic Valueをベースしたカリキュラムには変わりがないとしています。また、Shared Valueも定量化した目標値や期限等を定め、Performanceを測定することが重要だと指摘しています。余談ですがもう一人の大御所であるMarketingのP. KotlerはMITで経済学博士号を取得しています。どちらのGuruもその理論の背景はEconomicsにあることは容易に想像できます。

なお、記事の概要はこちらのPodcastで聴くことができます。音声はクリアで非常に聞き取り易いですが、InterviewerとのQ&Aというよりは、Porterの独壇場(?)といった感じです。

Porterの指摘は確かに的確です。企業の短期的な利益追求姿勢が、企業の長期的な競争優位性を奪っているのは事実だと思います。特に、コスト削減目的のOutsourcingによって従業員の企業に対するコミットメントが低下したり、あるいは、企業内のKnowledgeの蓄積が妨げられるといった弊害があることも事実でしょう。

しかし、『個々の企業がShared Valueを追求すれば、社会全体の利益も実現されるはず』という楽観的な考え方には少し疑問を感じます。Shared Valueを追求するために、企業間(あるいは企業と政府)でAllianceやCollaborationが必要になるケースは今後益々増加するでしょう。しかし、基本的にはSurvival of The Fittestを前提とした競争状況にあることは変わりはありません。社会利益の犠牲の下、短期的な利益に走る企業(いわゆるFree Rider)が登場する可能性もあります。そしてその数が増えてくれば、Shared Valueを追求するIncentiveが薄れる可能性があります。こうした経済人の(悪い?)側面が新しい価値観を持った社会起業家によって完全に払拭される可能性は薄いと思われます。

この点、(Shared Valueに反する行動をとる)Free Riderに対する一定のSanctionの制度化等の検討も必要ではないかと感じました。しかし、Sanctionにも問題点があります。Penaltyを払う方が得だと判断すれば、利己的な行動を取り続ける正当な理由を与えてしまい、結果的に、Sanctionが望ましい行動(Shared Valueの追求)には結びつかない可能性もあるからです。

Dan Arielryの著書では、一旦Market Norms(売買のように即時に反対給付が必要となるもの)が優勢になるとSocial Norms(友人間の好意のような即座の返報が必要ないもの)に再び戻るのは極めて困難だと指摘しています。

例えば、保育園(イスラエル)の子供のお迎え時間に遅刻する親を減らそうと、保育園側が罰金制度を導入したところ、罰金制度導入後にかえって遅刻が増加し、罰金制度を廃止した後も、遅刻する親の数は減らなかったという興味深い実験結果が報告されています(注)。遅刻に対する罪悪感や気まずさ(Social Norms)が罰金を払うというMarket Normsに置き換わってしまうと、「罰金=遅刻のコスト」と割り切ってしまい、かえって望ましくない結果(遅刻の増加)へと導いてしまう可能性があるわけです。

最近話題の『排出取引』もMarket Normsによる解決を図ろうとする例だと思います。確かに、適正な排出量や適正な取引価格の設定という問題も難しい問題を含んでいますが、Social NormsでなくMarket Normsに依拠することで、総排出量の大幅削減という目的が実現できないという危険性もあるような気がします。

低いコストで望ましい行動に向かわせるためには、Market Normsの世界ではなく、Social Normsの世界にいかに踏みとどまることができるかという問題を検討する局面が増えてくるような気がします。Sanctionも経済的なものでなく、(不名誉や恥といった)社会的なSanctionの方が良いのかもしれません。

もっとも、社会的なSanctionが機能するためには、ひとえに我々個人のMind-setとか(Social Normsの重要性を教え込む)教育に関わってくるような気もします。 

考えれば考えるほど難しい問題です。

(注)Uri Gneezy and Aldo Rustichini. 2000. A Fine is a Price. Journal of Legal Studies.   

2011年1月8日土曜日

HBRの購読

数年前、DLMBAへの入学に当たって半年間ほどTOEFL(CBT)を集中的に勉強しましたが、これを最後に、英語の勉強というのはほとんどしていません。
現在、英語の勉強で続けているものは、NHK英語講座(実践ビジネス英語)位です。Internetで好きな時に聴けるので、非常に便利です。ただ、勉強といっても1日15分で週3回ですし、ほとんど聴きっ放し状態ですから効果の程は期待できないのですが・・・。

DLMBAを受講していた時期は(与えられた教材だけで)十分な英語の分量がありましたので、改めて英語の勉強など意識する必要もなかったのですが、DLMBA終了後は絶対量も減少していますし、Managementに関する知識のupdateについてもやや疎かになっています。

こうした状況を少し打開すべく、Harvard Business Review(HBR)を購読することしました。DLMBA受講中は、ほとんどすべての学術誌については無料でAccessできたのですが、Alumniになると、Business Source Alumni Editionというサービスは使えるものの、残念ながらHBRの本文を読むことができません。

今回、Premium版(Online版とPrint版の両方が利用可能)にしましたが、Online版は非常に便利です。過去のHBRの記事が何時でも読めますし、読んでいる記事からクリック一つで参照記事に飛ぶこともできます。

読んだ記事などの感想についても折を見てアップしたいと思います。

2011年1月1日土曜日

謹賀新年

あけましておめでとうございます。
年頭にあたって、今年1年の目標を掲げる方も多いと思いますが、皆様方はどのような目標を設定されましたでしょうか?

私は、ここ2~3年は(新年だからといって)特に目標らしい目標というのを立てていません。
理由は、積み残しの目標が多くて、新しい目標を追加するのが難しいということに尽きるのですが、考えてみると、1年で達成できない目標もありますし、(1年もかからず)年の途中で達成可能なものもありますので、あえて1年(暦年)で区切る必要もないのかもしれない・・・などと自分を正当化しています。「1年の計は元旦にあり」という格言には反するのですが・・・。

ただ、新年に当たって新しいことが何一つないというのも寂しいので、こちらの新しいBlogを始めることにしたいと思います。具体的な目標は、積み残し事項を整理しつつ、見直していきたいと思います。

最後に、手前味噌ではありますが、引き続き雇用環境が厳しい中において、仕事を続けながら学べる海外の通信制MBA(DLMBA)の魅力は非常に高いと思われます。別枠で英語の勉強することなく、MBAの学習を通じて英語力アップが図れますので、正に一石二鳥です。海外(英国)のDLMBAに興味のある方は、こちらのBlogをご覧ください。